新NISAの特徴と活用方法
NISA(ニーサ)といえば少額投資非課税制度で 2014 年から始まった制度ですが、その後 2018年から「つみたてNISA」「ジュニア NISA」が始まり、なかなか複雑な制度という印象を持っている人もいたのではないかと思います。その NISA が 2024年から新たな形で制度変更されることとなりました。
ここでさらにNISAが複雑になるのではないかと心配する人も出てくるのではないかと思いますが、今回は現段階で分かっている新NISAについて紹介します。
なお、ジュニア NISA については 2023年までの投資期限を延長することなく終了すること となります。もっとも2019年6月時点の口座数も32万口座と一般NISAの 1,161 万口座、つみたてNISAの147 万口座とくらべると少なくないことから当局の思惑通りには普及しな かったのかもしれません。
新 NISA の概要
一部詳細が不明なところもあり、推測もありますが全体の概要はおおむね以下の通り
① 新NISAは2024年から開始される新たな税制優遇措置であり正式にはまだ決定したわけではない。(とはいえ一般的には今年の通常国会で可決されるのが一般的なのでほぼ決定と理解して問題ないと思います。)
② 基本的な構造は年間20万円までを上限とし積立投資をする1階部分と年間102万円を上限とし、1階より自由な投資が可能な2階部分という2階建て構造になっている。
③ 1階部分の投資は現在のつみたてNISA と同様で対象銘柄も現在のつみたてNISA と同様(になるのではないか?←ここは推測)
④ 2階部分の投資は原則として1階部分に投資していることが前提 (満額の20万円投資している必要はない)
⑤ 例外的に個別の上場株式については1階への投資を行う必要はない。(1階は投資信託が対象であるため、株式投資を行う投資家には投資信託の保有を条件としない)
⑥ 2階部分での投資は個別株式も可能で投資信託についても1階部分より広範なファンドへの投資が可能だがたとえばレバレッジ運用(ブル・ベア型等)や通過選択型ファン ドは除外される。その他、ヘッジ目的以外でデリバティブを使う商品も認められない模様
⑦ 新NISAの1階部分は5年の期間終了後簿価でつみたてNISA に移管可能
といった内容です。
なお、現行のNISAも期間が5年間延長されるほか新NISAへ移行することができるようです。さらに詳細は今後金融庁からも資料が出されると思うので注視していく必要があります。
新 NISA の概要をみて思うこと
新NISAは2階建て構造とちょっと複雑になっていますが、注目すべきは基本的につみた てNISAがもれなくついてくるといったまるでバリューセットを思わせる構造になっているということです。また、より広範囲な資産に投資可能な2階についてもレバレッジ型やヘッジ目的以外でデリバティブ取引を行うものは排除されているように金融庁も NISA が意図した長期運用となっていない現実を苦々しく感じていたのではないでしょうか?そこでつみたてNISA がもれなくついてくるうえ、これを使わないと2階部分は使えない、更に2 階部分で投資可能なファンドも一定の制限を設るといった長期分散投資を強烈に推奨する 姿勢が垣間見えてきます。私はこれについては非常に評価できるものであると感じていま す。一方で、すでにNISAにより株式投資を行っている投資家に対しても配慮しており、投資信託にこだわることなく、生株を嗜好する投資家に対しては例外的に1階部分を活用しな くても2階部分で利用可能といった気遣いも忘れていません。
新NISAが制度的にここまで投資対象資産を限定的に扱う制度を取り入れたことは、販売会社に対するメッセージとも受け取れ、未だに顧客本位の販売がなされていないことに対する警鐘とみることができるかもしれません。 更に勝手な想像をしていくと、新 NISA は2層構造となっており、必然的に1階部分のパフ ォーマンスと2階部分のパフォーマンスの差を意識せざるを得ない仕組みとなっています。2 014年から制度開始後5年経過時点でそのパフォーマンスの差を比較することによって、 低リスク、長期、分散投資の優位性を実体験として感じ取ってほしいといった当局の想いが あるのではないかと邪推してしまうのでした。