金融ジェロントロジーから考える金融サービス

皆さん「金融ジェロントロジー」って聞いたことありますか?これは、老齢化のプロセスを研究する「ジェロントロジー(日本語で老年学といいます)」と金融を組み合わせた言葉で、実際の寿命と資産の寿命のギャップを埋めようという「金融ジェロントロジー(金融老年学)」のことを言います。

 

 

つい先日、野村アセットマネジメントと野村資本市場研究所が55歳以上89歳までの1950人の方を対象に調査した「金融ジェロントロジー調査」が公表されました。まず先にこの調査の概要を述べると次の通りです。

 

〇 高齢層は老後に健康面の不安を感じる人が多い。他方、生活の満足度に負の影響を与えているのは、年金の減額、収入減少、資産枯渇等の経済的な不安である。

〇 資産の取り崩しを行っている世帯では、年間で金融資産の3%程度を取り崩している。当該世帯では、計画的な資産の取り崩しは3割に留まる。

〇 自己判断層においては、老後においても自己判断による証券投資を続ける意向だが、自分で投資判断することが難しく感じている様子も見られ、証券投資をやめて現金化する意向が比較的高い。

〇 長寿化する老後生活において、最期まで資産運用により、資産寿命を延ばすことの重要性が増している。その中で、金融機関は金融資産の一元管理などの資産管理サービスを提供することが求められている。

 

《具体的調査結果》

⦁ 将来に対する不安

この質問に対しては自分の健康または配偶者の健康に対する不安が大きいようです。

健康に関する不安とともに、「病気などにより高額の費用が必要になること」「年金額が将来減額されてしまうこと」など、お金にまつわる不安も多いようです。

 

⦁ 将来必要な老後資金

これについては、皆さんどれくらい必要だと考えているでしょうか?
調査の結果は以下のとおりです。

これは老後2千万円問題の影響でしょうか?概ね2千万円前後必要だと考えている人が多いようです。また、実際に用意できた資金について年齢別にみていくと、65歳あたりから増えているように多くの人が退職金を老後の資金に充てているということがわかります。

 

 

 

⦁ 金融資産の取り崩しの有無と取り崩し額

 

この結果は少し意外だったのですが、まず、取崩しの有無についてはリタイアメント後の年齢層も方でも4割以上は金融資産を取り崩していないということです。以前、老後2千万円問題で調べたときに、半分くらいの世帯は年金だけで生活しているというデータがありましたが、案外金融資産を取り崩さずに生活している人達が多いということなのかもしれません。老後も健康に対する不安があるため、いざというときのために、高齢世帯は金融資産をため込み、結果として高齢層の保有する金融資産割合が高くなるという状況がつづいていることがわかります。

 

 

取り崩し額については月平均6.6万円といいうことから計画的に取り崩しているというよりは、とにかく削れる部分は削っていこうという姿勢が垣間見えます。取崩し計画の有無を見ても全体の2割しか取崩し計画がないという結果が出ています。

 

⦁ 将来の資産管理方法

将来、高齢になって自身による資産運用ができなくなった場合、老後資金管理についてどのようにしたいか?という問いに対しては、「投資信託や株式投資による資産運用をすべてやめて、預金とする」と答えた人がどの年齢層でも一番高い結果となりました。これは、一番最初の将来に対する不安にもあったお通り、自分が認知症になるのではないかといった不安を抱えている人が多く、その時は資産運用をやめてキャッシュアウトしてしまおうと考えている人が多いことを物語っています。

 

 

 

⦁ 金融資産の管理について求める金融サービス

 

 

これを見る限り「金融資産の一元管理」「家族信託」「遺言状作成」「売却管理」についてのサービスを求める声が多いようです。このように考えると信託銀行の需要がますます高くなっていくのではないでしょうか。

上記の調査は、現在の高齢層を対象としているのですが、現役世代の方に対しては、このように今後求めるサービスについて今から知っておくということが結果的に将来の不安を少しでも解消する手立てになっていくのではないでしょうか。

 

 

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