ドルコスト平均法は万能な投資方法か?

投資の基本は、長期分散投資とこれまでも何度も繰り返してきましたが、分散投資の一つとして時間分散があり、これを実現する方法として積立による購入についてお勧めしてきたところです。

これは積立投資をすることによりドルコスト平均法による投資が可能となり、特に投資初心者には大変お勧めであるということを言ってきました。

しかし、これが「ドルコスト平均法は有利な投資方法である」といった誤解もあるようなので今回はその辺を考えてみたいと思います。

 

 

・ドルコスト平均法とは

そもそもドルコスト平均法とは「一定の期間ごとに一定の金額で同じ投資対象に投資し続ける投資方法」のことを指します。

 

この方法は特に投資初心者、現役世代の資産形成層にはお勧めの投資方法とされ、制度的にも社員持株会やつみたてNISA、確定拠出年金なども、このドルコスト平均法による効果が期待できるつみたて投資という形がとられています。

 

これらの勧誘チラシには必ずと言ってよいほどドルコスト平均法の効果が説明されていますが、それはいかにも優位な投資方法であるという誤解を与えているのではないかと普段から疑問に感じていました。

結論から言うとドルコスト平均法は投資効率の上からすると優位な投資方法ではありません。

 

・金融機関のドルコスト平均法の説明には注意

 

まず、ドルコスト平均法について金融機関が行うよくある説明資料を見てみます。

上の図は、実際にインターネット上からドルコスト平均法の説明資料としてあったとある金融機関の資料の一部ですが、だいたいこのような例を示し「ほら、投資資産の価格が下がってもドルコスト平均法によりプラスの収益がでるでしょ?」というパターンが一般的です。

 

 

確かにこのような値動きをする限りにおいてはそうなりますが、これは数ある値動きの中の一例でしかないということを頭に入れておく必要があります。

金融機関が説明資料で使用するパターンはすべて資産の値動きが後半上昇しているパターンのみ示されます。

 

これは、それまでの価格の下落により平均取得単価が下がっている(ナンピン買い)ところに、最後の方で価格が上昇するので利益が出るようにわざとしているからです。上の例でいえば8回目以降価格を上昇させることにより意図的に利益が出る水準まで引き上げているからです。

 

 

例えば下の図のように上げ下げを繰り返しながら概ね右肩上がりで推移する投資信託の場合、一括投資であれば、1.5倍になりますが、同じ投資信託をドルコスト平均法により投資すると約1.17倍にしかならない計算になります。

 

 

同じものに投資していながら差が出るのは、ドルコスト平均法は毎回少しずつ資金を拠出しているので、リスクにさらされている資金の総額(金額×時間)で見ると一括投資よりも少なくなるため相対的にとっているリスクが小さくなることからリターンも小さくなるということになります。

 

もちろん資産のパフォーマンスが右肩下がりの場合は、まったく逆のことが起こります。

 

・ドルコスト平均法による投資は優位なのか?

これを考えるときにまず、何と比べて優位なのかを決めなくてはなりません。先ほど書いた通り一括投資と比較した場合、結局は「金額×時間」でパフォーマンスは異なることから単純に比較してどちらが優位であるかを判断することはできません。

 

それでは、1リスクあたりのリターンで見てみてはどうでしょうか?

これは一括投資だろうと、ドルコスト平均法だろうと同じものに投資している以上は当然全く同じということになります。ドルコスト平均法による投資だからといって投資対象資産のパフォーマンスが上がるなんて言うことは決してないわけです。10万円買おうが1億円買おうが同じものに投資している以上は1リスクあたりで得られるリターンは等しくなるという理屈です。

 

・ドルコスト平均法のメリット

では、ドルコスト平均法は何がいいの?ということになりますが、投資の優劣ではなく、投資経験またはライフスタイルにあった投資を行うことができるということだと思います。私は最初、投資初心者または現役世代向けに積み立て投資をお勧めすると書きました。

 

投資初心者は、はじめはおっかなびっくり投資を行うものと思います。いきなり“今だ!”とばかりに大金をつぎ込むことはなかなか難しいのではないでしょうか。

 

そうしているうちに投資機会を失って気が付けば時間だけが過ぎ去っていたなんてことにもなりかねません。初めの第一歩として小額から始められる積み立て投資を利用するということは一つのきっかけになると思います。

現役世代の人はどうでしょう。現役世代の人の強みは何といっても毎月給料という形のキャッシュフローがあるということです。このキャッシュフローにあった形で投資することができるスタイルが自動積立であったりします。そういうこともあり、現役世代向けのつみたてNISAやiDecoも積立方式になっていると理解することもできます。

そして何より以前にも「人はお金の前では合理的な投資活動がなかなかできない!?」で書きましたが、人は経済活動の前では合理的な行動をとることができません。

 

自動積立という他律的な投資システムを利用することにより、いつ投資するべきかという迷いから解放され、結果的にストレスなく投資することが可能となるのではないでしょうか。こういったストレスない投資スタイルことが長期投資を続けるコツだったりもします。

 

・何よりも大切なことは

自動積立投資だからといって安心せず、注意しなくてはならないことがあります。自動積立は確かに時間分散にはなりますが、投資対象資産の分散とはなんら関係ありません。資産分散投資はこれとは別に注意しておく必要があります。日本株式インデックスファンドを自動積立で購入したとしてもそれは日本株式のリスクが時間とともに増大していくだけです。
こういったことも私がバランスファンドをすすめる理由の1つだったりします。

 

 

 

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