金融庁レポートで明らかになってしまった日本のアクティブファンドの実力

みなさんこんにちは。

先日6月19日に金融庁が「資産運用業高度化プログレスレポート2020」を公表しました。これは、国内外の運用会社からのヒアリングの結果を踏まえ、今後の運用業強化のための提言をまとめたものです。

 

注目すべきはこの中で、パッシブファンドとアクティブファンドのパフォーマンスについて金融庁が定量的に分析し、その結果を公表していることです。

 

今回は、「資産運用業高度化プログレスレポート2020」の中身について紹介したいと思います。

 

日本のアクティブファンドとパッシブファンドの状況

まず、レポートが指摘しているのはパッシブファンドに比較してアクティブファンドのパフォーマンスの悪さです。特に国内のファンドではその傾向が如実に表れています。

「資産運用業高度化プログレスレポート2020」より抜粋

 

 

上のグラフのとおり、信託報酬控除後のパッシブファンドのシャープレシオは0.4であるのに対し、アクティブファンドは0.2、信託報酬控除前のシャープレシオでもパッシブファンドは0.42であるのに対しアクティブファンドは0.29であるとしています。

 

この事実だけでも私としては衝撃なのですが、その前にシャープレシオについて少し解説します。

 

当HPの用語集のところから抜粋しますが「リスクに対してリターンがどのくらいかを計る指標で、多くの評価会社が評価指標として採用しています。米国のシャープ博士が考案したのでこのように呼ばれています。」と記載しています。簡単に言うと運用効率のことです。この数値が高ければ高いほど運用効率が良い(とっているリスクに対してリターンが大きい)ということになります。

 

それが、アクティブファンドはパッシブファンドよりもとっているリスクの割にはリターンがよろしくないということが金融庁から発表されたわけです。

 

しかもアクティブファンドは信託報酬控除前からシャープレシオがパッシブファンドより劣っていることまでわかりました。一般的にアクティブファンドは、投資先の銘柄の調査や独自のモデルによるより銘柄選定するもので、パッシブファンドよりも信託報酬が高い傾向になります。それが、高い信託報酬を賄うどころか、それを控除する前からパッシブファンドに負けているとなれば、何のためにジタバタと調査分析しているのか意味が全くないということになります。

 

アクティブファンドのパフォーマンス上の課題

米国との比較
それでは、米国の公募投信との比較においてはどうでしょう。
日本と米国では投資環境やマーケット規模が異なることから単純に比較することはできませんが、過去5年間の平均のシャープレシオや累積リターンは米国の公募投信の方が高いパフォーマンスを示しています。

ただし、米国でも全ファンドではアクティブファンドはパッシブファンドに対してパフォーマンスが下回っています。

 

「資産運用業高度化プログレスレポート2020」より抜粋

 

日本のファンドのパフォーマンスが悪い原因は?

では、なぜ日本の公募投信のパフォーマンスはよくないのでしょう。いろいろと原因はあると思いますが、今回のレポートによるとまず、ファンドの資産規模が原因であるとのデータが示されています。

ファンドの資産規模とシャープレシオの関係を見てみるとこれが見事に相関しているというデータです。

「資産運用業高度化プログレスレポート2020」より抜粋

上のグラフのとおり見事に資産規模が小さくなるに従いシャープレシオが低くなっているということがわかります。投資信託を選ぶ場合、基準価額の動きばかりに目が行き、純資産総額を意識しないまま購入してしまうkとがあると思いますが、純資産総額は運用の効率化の観点から非常に重要であることが分かります。

 

小規模ファンドの乱立

そして日本は小規模なファンドの割合が高いこともパフォーマンス低下の一因であるとレポートは示しています。

「資産運用業高度化プログレスレポート2020」より抜粋

上のグラフはファンドの採算性について規模別にみたグラフですが、小規模ファンドほど運営コストをまかなえていないファンドが多いことを示しています。

 

オリジナルファンドの存在

更に他の要因としてオリジナルファンドの多さが指摘されています。オリジナルファンドとは1社独占で販売するファンドのことで〇〇銀行専用ファンドとして宣伝されたりもします。

これは販売会社が多いほど当然、残高が積みあがる可能性が高いので結果的に効率的な運用が可能となるのですが、販売会社側(証券会社や銀行等)から「うちでしか買うことができませんよ!」ということで、専用ファンドとして設定することを運用会社との間で約束して組成されるものです。

 

 

 

「資産運用業高度化プログレスレポート2020」より抜粋

 

レポートではなんと、1社専属で販売されているファンドが最も多いことを示すデータが公表されていました。これでは、効率的な運用を行う投資信託が少なく、結果的に日本のファンドはパフォーマンスが思わしくないのも当然といえます。

 

最後に

 

今回のレポートは日本の投資信託が構造的に非効率な運用とならざるを得ない現実をあぶりだしています。ただ、注意しなくてはならないのはこれは全体で見ればアクティブファンドの方がパッシブファンドよりもパフォーマンスは悪いということが言えても、個別にみていけば非常に優れているアクティブファンドが存在することも事実です。こうしたアクティブファンドをどのようにして見つけ出すかがポイントになりますが、結局、以前「インデックスファンドとアクティブファンドどちらがおすすめ?」で書いたように優れたアクティブファンドを探し出す指標がない限り、コストの安いパッシブファンドを選択することが結果的に堅実な選択だと言えるでしょう。

 

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